りと浮かびあがっ

 再び荷物をボートに積み込むと、かれらはボートを押して再び沼の上に浮かべた。沼獣は三人のようすをじっと眺めていたが、そのまなざしには何の脅威も悪意も浮かんではいなかった。だがその毛むくじゃらの小さな顔にははっきりとした意志があらわれていた。するとどこにも切れ目がないように見えた池の一部が開いて、夜のあいだ隠されていた水路があらわれた。先ほど合図をした沼獣が先に立ち、奇妙な丸い頭を浮かべて泳ぎ始めた。かれはときどき三人がちゃんとついてきてるかを確かめるように後ろをふりかえった。もう一匹は大きな目を警戒するように見開いて、ボートの後にぴったりついてきた。
 やがて空からぽつりぽつりと降り始めた雨は牙齒矯正、間断ないこぬか雨に変わり、両側に果てしなく続くアシやガマの群落の上にベールのように降りそそいだ。
「いったいどこへ連れていく気だろう」シルクがさおを動かす手をとめて、顔から雨をぬぐいながら言った。だが後ろからついてきた沼獣の怒ったような声に、再びさおをぬかるみの底に突いてボートを動かし始めた。
「行ってみるしかあるまい」ベルガラスが答えた。
 水路はどこまでもかれらの前に広がっているようだった。三人は初めに姿をあらわした沼獣の丸い頭のあとに従ってボートを操っていった。
「前に見えるのは木りと浮かびあがっ
ですかね」もやのかかったこぬか雨に目をこらすようにしてシルクが言った。
「そのようだな」ベルガラスが答えた。「どうやらわれわれはそこへ向かっているらしいぞ」
 霧のかなたから大きな木立ちの影がゆっくてきた。近づくにつれ、アシの群落からなだらかにせりあがった陸地が見えてきた。島を覆う樹木のほとんどは長い枝をなびかせる柳の木だった。
 先頭をいく沼獣は島に向かって泳ぎつづけた。やがて陸地にたどりつくと、それは体の半分を水から出して口笛をふくような不思議な声で鳴いた。ほどなくして木立ちのなかから茶色のマントに頭巾をかぶった人影があらわれたかと思うと、岸辺にゆっくりとおりてきた。別に何かを予期していたわけではなかったが、頭巾をはねのけた女性の顔を見たガリオンは少なからず驚いた。その顔は年老いてこそいたが、若い日々の美しさをまだ十分にとどめていた。
「ようこそ、ベルガラス」彼女は奇妙に平板な声で老人をむかえた。
「やあ、ヴォルダイ」老人は打ちとけた声で答えた。「ずいぶんひさしぶりじゃないか」
 かれらのボートを案内してきた小さな獣は水からあがると、茶色のマントの老婦人のまわりにまとわりついた。かれらはかん高い声で女主人に何やら話しかけた。彼女は愛情をこめたまなざしを向け、濡れた毛皮をやさしく撫でてやった。沼獣は中位の大きさの、小さな丸まる太った腹に短い足を持った動物だった。かれらは前足を毛むくじゃらの胸にちょこんとつけ、後ろ足で立って小刻みなすり足でちょこちょこ歩いた室內設計裝修


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